花木規子先生が
2024年9月6-8日に
日本心理学会第88回大会(熊本城ホール)で
研究発表しました。
理科の計算問題をできるようにする図表スキルの教授法開発
(花木・綾部)
「理科嫌い・理科離れ」は1980年代後半に教育問題として登場して40年以上経つ。しかし,理科離れの研究方法に関する先行研究の多くは示唆を提示にとどまり(長沼,2015),現象の解明や解決に向けた実践介入方法はほとんどない。中学生になると,「理解できない部分が多い」,「理屈が難しい」,「数学の力が必要になる」などが,理科嫌いの理由として挙げられている。つまり,理科の内容が高度になるにつれてついていけなくなるだけでなく,数学的な問題解決におけるつまずきが加わって,理科に対する興味を失う (加藤, 2008)。このように理科の統制感低下が理科嫌いに影響する可能性がある。先行研究によれば,「電流回路」と「溶解度」は数学的な問題解決におけるつまずきが中学生の理科嫌いをもたらす学習単元であり(原田・鈴木, 2018),図表を活用させる教授法は数学的問題解決を促す(綾部ら, 2021)。本研究の目的は,理科の学習単元における数学的問題解決に対処するために数学教員が図表を活用させる教授(表/線分図)を行うことで問題解決が促し,理科の統制感を高まることで理科嫌いが解消されるかを検討することである。
キーワード:図表スキル、電流回路、溶解度
社会的報酬によるアンダーマイニング効果の神経基盤の検討
(綾部・小池・定藤)
本研究の目的は,社会的報酬によるアンダーマイニング効果の神経基盤を明らかにすることである。外的報酬が行動の生起確率を常に高めるとする伝統的心理学理論では説明できない現象であり、仕事や学業の満足度,パフォーマンス,行動の持続性が下がるという弊害がある。心理学において,金銭的報酬はアンダーマイニング効果を生じさせるが,社会的報酬は生じさせないとされる。ところが,神経科学的には社会的報酬も金銭的報酬と同様に報酬系脳活動を活発にさせる。つまり,私たちの脳はお金かほめかを区別せずに報酬を認知している可能性があり(共通通貨仮説),それらを区別するとする先行知見に矛盾する。本研究は金銭的報酬に伴うアンダーマイニング効果を報酬系脳活動の消失によって裏付けたMurayama et al.,(2010)の手続きに忠実に従い、社会的報酬を加えて神経基盤を機能的MRIによって調べた。その結果,先行研究の関心領域においては社会的報酬による報酬系脳活動は維持されたが,金銭的報酬による消失は再現されなかった。したがって,関心領域の検討を含めてより詳細な分析を進める必要がある。
キーワード:ほめ、アンダーマイニング効果、fMRI
番外編
(あやべひろあき)
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