聖徳中学と京都大学
の共同研究が
国際学術雑誌に
採択されました
2017年から取り組んできた
文章題をうまく解くための
図表活用能力開発研究が
国際学術ジャーナル
Frontiers in Psychology
和訳『心理学の最前線』
に採択されました
内容のまとめ
図表は文章題を解くために効果的です。
しかし
生徒は図表を自発的に描かず、教師が「図表を使え」と適切な図表を描かせてもうまく使って解けないことが知られています。
本研究は問題に適切な図表の使い方の指導の効果を調査しました。
中学生67名を対象に
線分図、表、グラフの使い方
を数日にわたって段階的に教え、文章題を与えました。
その結果
指導直後に対応する図表の使用割合のみが増え
正答率が向上し
その効果が持続しました。
この図表の使い方指導は
認知負荷(ワーキングメモリにかかる負担)
も下げることが検出され
図表の自発的な使用を促す証拠
の一つとして示されました。
これらの結果は
視覚的にワーキングメモリを助け
問題を解くための道具として
図表をうまく使う能力は
宣言的知識(「何を使えばいいか」)だけでなく
条件的知識(「その図表をいつ、どうして使うか」)
手続き的知識(「どのように使うか」)
の習得によって開発される
という学習方略の先行研究を
支持しています。
成績をアップさせたい君へ
「もっとよく考えろ」
と指導者はよくいいますが
考える方法を教えている指導者はほとんどいません。
やり方の説明をくりかえすだけでは
よくわからない子は永久に
考える力が身につきません。
文章題がいい例です。
多くの子どもは文章題でつまずきます。
この問題は昔から深刻とされていますが
有効な解決法はまだありません。
数学や理科の先生は
「図表を使えばもっとかんたんに解けるはずなのに…」
と嘆くのですが
どう教えれば図表をうまく使えるようになるか
はまだよくわかっていませんので
使える子と使えない子で
学力はどんどん開きます。
仕方がないので
やり方の解説をくりかえし
その丸暗記を実行させて
わかったような状態にする
これが精いっぱい
でもやっぱり
考える力が身についたわけではないので
問題が変わると解けなくなったり
やり方をすぐに忘れたりしてしまいます。
せっかく努力したのに
何も勉強しなかったことと変わらなくなってしまう
ということです。
これは大変
このような現象は
勉強が難しくなる中学生になってはじめて
露見することが多いです。
「定期テストではできるけど
実力テストになるとできません…」
というやつです。
特に公立中のテストでは
教科書やワークとそっくりの問題が出されることが多いので
覚える力と考える力を別々に測定しているわけです。
災難なことは
中学生になって初めて気づくのでは
高校受験で成功するためには遅すぎるかもしれないということ。
つまり
「定期テストは…」
というやつを直すためには
丸暗記の成功体験を捨て
考える力を身につけ
学びの信念を変更する必要があるからです。
口でいうのはかんたんなのですが
心理学的には少なくとも1~2年の時間を要する心の変更です。
ですから
高校受験に間に合うかどうかが微妙になるわけです。
中学を受験する子のほとんどは小6でこの問題に気づくことができるため
強みとなります。
思考スキルを開発するカギは
図表
図表には
問題をわかりやすくする働きと
うまく解くための推論を促す働きがあります。
前者はほぼ明らかですが
後者はまだはっきりわかっていません。
教科書は
「多面的な見方考え方」と称して
解くために適切な図表を
ぼやかして説明しています。
結局
区別がつかないまま子どもたちは学ぶので
文章題を解くときに
式しか書けない子
が少なくありません。
このような深刻な問題を
解決するために
この研究は
続けられてきました
問題を解くために
適切な図表を作成し
それをうまく使って
解く方法を学び
習うことが
最新の科学的知見
アチーブの指導を
少し細かい
と感じるかもしれませんが
それは
考える能力が
開発されているんだ
と信じて
ぜひがんばってください!
学校のテストなら
ほぼ間違いなく
高得点を取れるように
なりますので
雑感とお礼
実験室ではなく
学校の授業形式で
実施された調査
一般にこのような比較調査では
「何も教えないグループ(たとえば、対照実験)」
が必要なのですが
生徒に不利益を生じさせないように
あえて対照群を設けない実験デザインに
チャレンジしました。
セミナー形式で授業できたのはよかったのですが
トップジャーナルの審査をするような
欧米の心理学者は
このような実践研究を
なかなか
相手にしてくれませんでした
そうこうしているうちに
この研究に参加してくれた子たちは卒業し
東京大学に
2名が合格
なかなかうまくできなかった子も
名大医学部
や
岐大工学部
へ
最も輝いていた子は
アチーブの
立派な先生
になってくれています。
そうしたみんなのがんばりを心の支えに
七転び八起き
ようやく
努力が実を結び
優良学術ジャーナル
で認めていただきました
聖徳中学や京都大学だけではなく
フランスの共同研究者
Erica De Vries (仏グルノーブル・アルプ大)や
公立校の先生など
たくさんの方にご支援をいただきました。
本当にありがとうございました!
(あやべひろあき / Hiroaki Ayabe)
この記事へのコメント