ヒトが考えるためにとても役立つ図表
ところで、図表って何だ?
この問いをていねいにレビューし、奇抜な着想で展開している研究
フランス グルノーブルアルペス大学(Grenoble Alpes University)のエリカ・デ・フリース教授(Erica de Vries)が2021年9月29日にダイアグラム国際学会で発表
要約
図表を使用した学習研究は、主に認知主義の視点を取り入れており、学習と問題解決は、内部の精神的表現と外部の身体的表現の間の相互作用として概念化されている。客観主義的認識論に端を発する2つの根本的な仮定に疑問を投げかける。それは、象徴的な表現としての図の直接性と、文化的および言語的背景の観点から、図の作成者とユーザーの同一性である。貢献の残りの部分は、現実が社会的および経験的に基づいており、表現がコンテキスト内のオブザーバーに決定的に依存するという相対論的視点が採用されている。そのために、学習者が図の内容も種類も知らないという理論的状況を調査する。研究方法として、未知の文明の碑文に出会う考古学者の視点を取り入れ、図を用いた学習におけるアブダクション推論の役割を明らかにする。形式的フレームワークは、絵・描画とダイアグラム(図表)、文字通り(明示的外延)、比喩的(暗示的外延)、メタ言語的意味、および内部表現と外部表現の違いをさらに研究するための再帰的なルールで開発する。フレームワークは、コンテンツのないテストパターンのセットで示されている。フレームワークを評価するためのいくつかの方向性が結論を示す
形式的フレームワーク(A formal framework)
絵・描画とダイアグラム(図表)、文字通り(明示的外延)、比喩的(暗示的外延)、メタ言語的意味
pictures and diagrams, literal (denotative), figurative (connotative), and metalinguistic meaning
Denotation:表面的な言葉通りの本来の意味
Connotation:その裏に隠しされた真意(言外の言)
アブダクション推論 (abductive reasoning)
仮説推論のこと
もし、○○だったら、〇〇という理由から〇〇になるだろう。
あるいは、もし、○○だったら、・・・
アブダクション・・・
説明的な仮説を形成する過程。新しいアイディア(観念)を導く唯一の論理的操作。帰納はひとつの値を決めるにすぎず、演繹はまったくの仮説の当然の帰結を生むだけであるからだ(チャールズ・パース / Charles Sanders Peirce)
まとめ
場面設定
未知の文明の碑文に出会う考古学者の視点を取り入れ、図表を用いた学習におけるアブダクション推論の役割を明らかにしようとした研究。
考古学者は碑文に書いてある文字の意味を仮説推論しながら紐解いていかなければならない。現代人の知識や主観は仮説を崩壊させる。未知文明を引き合いに出した点はおもしろい。それくらい私たちは既有知識に影響を受けながら物を見ている。
コンテンツとグラフィカル言語の事前知識
左図がボックスと矢印のモデルの規則に、右側の図がフローチャートの規則に準拠
グラフィカル表現は、コンテンツとグラフィカル規則の相互関係を隠してしまうが、コンテンツとグラフィカル言語の事前知識が必要
どのような図表が適切か
何を見たいのか=それを見やすい図表
それによってコンテンツとグラフィカル言語を修正する必要がある
ここがむずかしい。
学校教育では教示が限定的。あるいは問題解決の関連が分断されている。
問題を解くために何を見たいのか
特定の図表はどんな推論を促すのか
図表と図表はどのように関連しているか
これらの点を教示の中で明示的にしていく必要がある