Zくん「だからオマエはバカなんだ!」
みんな「ハハハー!バカー!バカー!」
Aくん「………」
心の声(くやしい、今に見ていろ!
いつかきっと、見返してやる!)
ここまではよく見られる風景
しかしAくんはちがいました。
笑ったみんなを見返すために
くやしさをバネにして
死ぬ気で勉強したのです。
(3か月後)
Aくんの成績が大幅アップ!
なんと、クラスで1番に
Zくん「おまえ、すごいな。もしかして、アチーブに入っただろ?」
Aくん「まあね。Zくんもきっとできるようになるよ。応援してるよ。」
みんな「しーん(何もいえない…)」
こんな生まれ変わり物語
実はちょくちょくありますね。
でも
どんな条件が重なると
こういうミラクルが起こるのでしょう。
ポイント
1.自尊心
2.罰
3.防衛機制
こころのしくみ
自尊心(自己肯定感; e.g., Rosenberg, 1965)が低い状態でpositive punishment(けなす)を受けて 昇華(社会的に価値の高いテーマに打ち込む; 防衛機制; Anna Freud, & Sigmund Freud)の手段を選択した と考えられます
かんたんにいえば…
今の自分を尊重する気持ち
(=自尊心、自己肯定感、自信、プライド)
が低い状態のときに
他の人からけなされる(=罰)と
自信がない状態がさらに強化されたり
プライドを傷つけられたりするので
自分の欲求を守ろうと心が働くのです。
そんなとき
勉強はうってつけのはけ口
規則に従って自己投入すれば
勉強は必ずできるようになります。
(外発的なモチベーション)
成績が上がると楽しくなって
もっと上げたい
という欲求が芽ばえます
(内発的なモチベーション)
このように
モチベーションがよい形で伝染して
Aくんのような奇跡が起きるのです。
注意点
この心のしくみは複雑なので
いくつかの条件を満たす必要があります。
自尊心が低い状態が◎
自信満々な人に「バカ」といっても失笑を買うだけ(=効果なし)
くやしさをバネに
できるくらいに
心が強いと◎
昇華できなければ効果なし
心が弱い(落ち込んだ)状態では
くやしさをバネにできないので
苦い経験を心の奥にしまい込んでしまう(抑圧)
バカを演じてへつらうようになる(反動形成)
勉強できないことを正当化するために
わざと勉強しない(セルフ・ハンディキャッピング)
予想外の結果になることも…
自分よりできない〇〇さんが笑ったのは許せない(転倒)
みんなが笑っているのはボクをバカにしているからだ(妄想)
罰(Punishment)は長期間記憶されやすいので
立ち直りに時間がかかります
大切なことは…
内発的モチベーションへの伝染
勉強を 手段 から 目的 へかえること
バカにされたくないから勉強する
ということは
バカにされないなら勉強しない
ということなので
一番かんたんな解決法は
逃げること
かもしれません
気に入らない子を避ければいいし
受験でむずかしい学校を受けなければいい
逃げ道はヤマほどある
そうなると
何も獲得できなくなり
一生自信をもつことも
できなくなります
せっかくの教育機会を
台無しにしてしまう
のはもったいない
まとめ
Q. バカにされると 成績が上がるか?
A. 条件を満たせば 上がる
自尊心が傷つき、それを忘れずに
逃げることなく結果で示そうと
努力できることが条件です。
人生の成功のカギは…
自分の努力不足から目をそむけることなく
楽しくなるまで
ひたすら打ち込む
ことだと思います。
くやしさをバネに
日常のささいなことでも
人生を切り開く原動力になる可能性があります。
いやなことがあったからといって
楽な方に逃げてしまっては
大切なチャンスを逃してしまうかもしれません。
いろいろな刺激を大いに活用して
飛躍していこう!
※ストーリーはフィクションです
※議論は仮説です
参考文献
Freud, S. (2014). The neuro-psychoses of defence. Read Books Ltd.
Rosenberg, M. (1965). Society and the adolescent self-image. Princeton, NJ: Princeton University Press.
速水敏彦. (1995). 外発と内発の間に位置する達成動機づけ. 心理学評論, 38(2), 171-193.