スマホをもたせるべき?
LINEは?
twitterなら?
に頭を悩ませている保護者の方はとても多いですね。中学生をお持ちの親御さんを対象とした教育相談では毎回といっていいほどお寄せいただくご質問です。
ここではこれまでの経験を振り返って、私の考えをお伝えいたします。どうぞご参考にしてください。
Q)スマホをもたせてもよいですか?
A)必要ありません。持たせるなら親がコントロールする必要があります。
理由①
成績は下がる
学業成績によくない影響を与えることはわかってきています。偏差値が少なくとも3~5はダウンするという報告が多いです。一方で、インターネットを活用した学習の効果は限定的です。
理由②
ルールを守れない
スマホの使用時間をコントロールできないという問題が高い確率でついてきます。ふだんの生活で時間のコントロールがうまくできない子や決められたことを「今日は・・・」と言い訳をして変更しがちな子は、ほぼ100%、問題が起こるでしょう。
なぜスマホを与えたのか?
理由①
みんながもっているから
昔も今もかわらない鉄板の子どもの主張。しかし、実際は、みんながもっているわけではありません(地方に住む中学生の保有率は約5割,2019年9月,NTTドコモ「モバイル社会研究所」調べなど)。
理由②
親が便利だから
いつでも連絡できるのは親にとっても便利かもしれません。しかし、弊害もあります。
たとえば、アチーブでは教室でスマホを鳴らさないように指導していますが、ときどき「お母さんから電話がかかってきたので、出てもいいですか」と授業中にもかかわらず申し出る子がいます。また、着信バイブが鳴るとその時間中そわそわして落ち着かない子もいます。
私はこのような行動をとてもネガティブにとらえています。実際に、そういう子が成績を伸ばすケースはほとんどありません。第一、他の子の気も散ってしまうので迷惑です。
子どもの自主性や計画性を高めようとするならば、重要ではないやりとりを思いつきですることは好ましくありません。固定電話をかけるときと同じように「重要で緊急の連絡」にしぼってやりとりするのが理想的です。
外出したら安易に連絡できなくなる、ということを前提に事前に準備することの大切さを教えた方が教育上は望ましいはずです。
一方で・・・
「中学生には持たせない」家庭は少なくない
私の知る限り、むしろ、子どもの学力がトップレベルのご家庭ほど持たせておらず、親が勧めてもたせても子どもの方がほとんどつかわない、というケースがほとんどでした。ですから、「どうしてもスマホをもたせる必要がある」という特段の事情がないかぎり、持たせる必要はないし、持たなくても進学には関係ないでしょう。
どうしても必要な場合、スマホ機能に制限をつける、ガラケー、必要な時だけ親がかす、等の対応で十分でしょう。
特に、親がスマホの機能をよく知らない場合、トラブルが発生してからでないと問題を発見できない傾向があります。
ですから
子どもが喜ぶし、親も便利だから
と後先考えずにスマホを与えるのは避けた方がよいと思います。
Q)スマホばかりやっています。取り上げてもよいですか?
A)指導方法を工夫してください
あとから取り上げるのは『禁物』
あとから取り上げるのは『禁物』。子どものいいなりになって与えたものの、思うようにいかなかったからという理由で親があとから取り上げる。これはもっとも避けたい指導方法の一つです。
親が子どもの行動を見誤らなければ受けるはずがなかった「重い罰」。一度獲得した財産、道具を失うこと、スマホが作った人間関係や社会的な位置づけに影響が及ぶことは、子どもにとってはかなり大きなペナルティです。
罰は「心の傷」としてネガティブな形で残りやすいだけでなく「罰が当たり前の人間」(←道徳性発達の停滞)になりやすいという問題も危惧されるため深刻です。
また、スマホにかかわる問題が起きると、「だからあれほど約束しただろう」と親が子どもを一方的に指導する構図が出来上がり、一見すると、親が優位な立場で話が進められることが多いのですが、親にも見込みを誤り、指導や監督に失敗した責任があることを自覚する必要があります。そう振り返って、段階的に使い方を指導する計画を立ててみてください。
これからスマホを与える人は、子どもが本当に約束を守れるか、正しく使えるのか、もう一度冷静に判断をして、スマホの与え方を検討しましょう。
Q)LINEやtwitterをつかわせてもよいですか?
A)中学生には必要ありません。
理由①
本人がトラブルを引き起こす可能性がある
「twitterに書いた誹謗中傷文がクチコミサイトに転載されて(して?)問題化」(⇦ 子どもに謝罪さえさせられない、転載に至った経緯の説明さえ十分できない、という放漫な家庭環境が背景。問題解決に取り組もうとしても、相手が責任を果たさないケースがあることを知っておく必要が)
「LINEグループにいないメンバーの悪口を書いたため、いじめ相当事案として問題化」
「友だちのLINEに執拗にスタンプ攻撃を行った。やったほうは軽いいたずらのつもりだったが相手は被害を訴えて迷惑行為として問題化」
理由②
トラブルに巻き込まれる可能性がある
「LINEグループにいない子の悪口を他のメンバーが書いたため、書いていないメンバーの自分まで、いじめの構成員としてみなされた」
「あるLINEグループに誘わなかったことを、いじめの一環だと主張されて問題化」
「あるLINEグループに入ることを断る、あるいは、グループから抜けたため、友だち関係が悪化した」
「勝手に送られてきたLINEやtwitterのDMを読まないと『既読無視』と非難される」
「誰かが嫌がることだけど気を使って『いいね』や『リツイート』したら拡散されていた」(←ボタンを押しただけでも名誉棄損罪の判決、あとから取り消しても拡散した事実は消せない)
SNSが必要だという理由は
『人間関係の作り方』にあるのかも
「LINEがなければ、友だちになれない」
「twitterがなければ、他の人とつながれない」
SNSは重要なコミュニケーションツールだと思いますが、中学生がこのような相談をした場合、リアルなコミュニケーションの取り方に改善の余地があるかもしれません。
毎日学校で会っている友だちが相手ならなおさら。人間関係に問題を起きる前兆かもしれません。
子どもがなぜSNSを必要としているのか、なぜ直接のコミュニケーションで不十分なの、今一度、ふりかえってみてはいかがでしょうか。
「友だちを大切にできる子か」
「友だちの気持ちがわかる子か」
「友だちの気持ちを考えて発言できる子か」
「親や友だちに依存しすぎていないか」
リアルな人間関係がうまくいかないためにSNS(ネット)に頼ろうとしているのだとしたら、SNSは問題を悪化させることはあっても解決につながる可能性は高くはないでしょう。変える必要があるのは道具ではなく、人とのつきあい方だからです。
Q)LINEやtwitterがないと学校の連絡を受けられないといっています・・・
A)学校にすぐに事実を確認してください。
「LINEでやり取りしなければ、学校活動に不利益が生じる」
「twitterがなければ、情報収集に不利益が生じる」
子どもがこのように訴えた場合、「誰が、いつ、そういったのか」を具体的に調べて、保護者の方が直接、学校に確かめる必要があります。真偽にかかわらず問題だからです。つまり、本当にそうならば学校運営に問題がありますし、そうでなければ、誇張することでSNS使用の主張を正当化していると判断できそうです。
大切なことは
子どもの言うことを鵜呑みにしないこと
一見子どもの気持ちに寄り添っている感じがしますが、甘えを助長しているだけで精神的な発達を遅らせている可能性があります。なんでも鵜呑みにしてしまえば、子どもは自分の都合よい主張をくりかえすようになります。ましてや、学業や行動に成果が伴っていないという状況であれば、鵜呑みにする親の方にも問題があるといわざるを得ません。間違っていることがわかっていて放任しているからです。子どもに自己主張させること自体はポジティブなことだと思いますが、親は必ず裏を取る必要があります。中学生は相手(親、先生、友だち・・・)に合わせるために、矛盾していても異なる主張をする傾向があるからです。また、都合の良い主張は社会との矛盾も引き起こします。自己主張に対して社会的視点を加えていくことがしつけです。
Q)ネットやSNSに悪口を書きましたが、消せば大丈夫ですか。
A)大丈夫ではありません。
消せば、許される
このような抗弁が親から出てくることもあり、まさに、おどろきにたえません。むしろ、だからやるんだ、と感じてしまいます。まず、やったことを許すか許さないかは相手が決めること。許してもらうためには許しを請う必要があります。
インターネットに公開された情報は世界中の誰でもが入手して記録できます。同時に誰でもが容易に拡散できます。インターネットと黒板は違います。消してなくなるのは自分の端末だけ。外に出したものはもう消せないし、拡散したものは回収できません。当然、責任は永久につきまといます。
トラブルに立ち会って驚くこと
「匿名だからわからない、と思った」
「あとから消せばいい、と思った」
びっくりするほど、やった人は投稿したことを深刻に考えていないことが多いというのも実情。
しかし、すべてに証拠を残した迷惑行為だと悟るべきです。
頭かくして、尻かくさず
Q)匿名のカキコミで訴えられることはありますか?
A)十分あります。
書き込んだ人物がだれなのかを特定しやすくなっています。
発信者情報開示請求
認められれば少なくとも契約者は特定されます。たとえ、スマホやPCのデータを消してもサーバーには残っているからです。開示手続きにかかる費用は安くありませんので、裁判で負ければ慰謝料とは別に、数十万円の費用を追加負担する可能性があります。
リアルな信頼関係を失う
中学生はリアルな知り合いの間で問題を起こす傾向があります。その場合、あなたがどれだけ言い逃れをしても、起こした事件を知っている人の周辺にまたがる信頼関係を失うことを覚悟する必要があります。
全く無関係な第三者があなたの周辺で迷惑行為をする可能性は限りなく0に近いわけですから、たとえあなたが証拠をうまく消しても、あなた以外に犯人がいる可能性がないわけですから疑念は払しょくされず、あなたは周囲が警戒する目にさらされたまま、信頼は失われるでしょう。
また、言い逃れをすることで罪を回避できると甘く考えている人がいますが、状況証拠が整っている状態で言い逃れをする場合、あなたが犯人を作り上げなければ損害賠償責任を逃れることはむずかしいとされています。
やる人はやられる人のことを考えられない人だと思いますので、このような幅広い視点を持ちにくいのだと思います。かといって、果たすべき義務や責任がなくなるわけではありません。何より、どれだけ証拠を残さないように処分しても、やられた方は一生忘れない。
罪が償われなければ時効もありませんから、追及される余地も一生残ります。
Q)子どもがやったことに親が出る必要はありますか?
A)ネットの責任を取るのは子どもではなく親です。
「子どもがやったことだから」が通用しないのがネットトラブル
ネット上のトラブルは、ひとたび学校の外に出れば、あるいは、学校の外で起これば、法的責任を負うのは子どもではなく親です。親には子どもの監督義務があるからです。ですから、話がうまく解決しなければ「子どもがやったことだから」では済まなくなることを知っておく必要があります。
少なくとも、民事訴訟で裁判所が損害が認めたときに、その賠償金は親が支払うことになります。中学生といえども大人のプラットフォームに参加したわけですから、大人がやったことと何ら変わりがありません。裁判で争った場合、損害があれば金銭で解決し、縁を一切断ち切るというが一般的な大人のやり方です。子ども同士のけんかのように「おたがいさま」「これからは仲良くね」という甘い裁定では解決できないことをよく知っておく必要があります。
重要な点は、大人のプラットフォームに参加することを認め、子どもの迷惑行為を防止できなかった責任は親にあるということです。子どものネットトラブルは、親のしつけの良し悪しの問題にとどまらず、監督義務を親が果たさなかったという過失に起因すると社会は考えるわけです。ですから、親バカに見ても不安が残るような子どもを大人のプラットフォームに出すことは、盗人に鍵を与える、子どもに兵器を持たせる、のと大差ありません。人を傷つけたり、他人の物を盗んだりすることが可能なツールなのですから、もはや子どものおもちゃではないのです。実際に、ネットを使った心ない行為は、金銭では到底解決できない、取り返しのつかない事件をたくさんの引き起こしています。本当に深刻な問題です。
残念ながら、日本の警察はそのほとんどを追及しきれずに逃してしまっています。しかし、決して許さない姿勢を社会は誇示し始めました。時間がかかるかもしれませんが、そのようは卑怯な行為に対抗し、償いを求める方法はますます進化していくはずです。このことは、中学生だからといって許される問題ではありません。親が責任を負うことを前提に、親の監督のもとで大人のプラットフォームを使うことを中学生に認めているだけなのです。
いつ、告訴されるか、わからない
ネットでのいやがらせは社会問題化しています。このような迷惑行為に対して自殺する人も増えており、そんな卑怯な行為に対して積極的に法律に訴えようとする機運が高まっています。社会問題化すればするほど、政府は情報公開に前向きになるでしょう。公開される情報の質もどんどん高くなってきています。
ネットで迷惑行為をする人は
匿名性とか個人情報保護の拡大解釈とかをよりどころに、はたまた、
求められてもいないにもかかわらず社会の代弁者を気取って、
名前を名乗って直接言えないのにネットをかいくぐって主張する
卑劣な人間でしょう。
卑劣な人間でしょう。
しかし、たまたま法整備が遅れているだけで、そのような卑劣な人間の迷惑行為を許しているということではありません。
被害者の立場を考えれば今後ますます透明化を進める必要があるでしょうし、実際にそうなるだろうと予想されます。
ですから、たとえ匿名であっても、それは、
不特定多数の人に「名前を公表して」同報でメールを送っている
そんな状況をほぼ同じだと心得てネットに投稿しないと、忘れたころに警察や裁判所から呼び出される、なんていう可能性は十分にあります。
あなたは忘れられるかもしれないが
相手は決して忘れない
そう、肝に銘じておいてください。
余裕、ありますか?
学校の勉強がかんたんすぎてテストでもほとんど間違えないという子が暇つぶしに使うというならわかります。また、「みんな」と同じように平均的な学力の高校に「みんな」といっしょに進学したいから「みんな」と同じことをしたいという関係依存的な子なら、それも理解できます。しかし、目指している目標がそうでないのであれば、目を向けるべきところはLINEやtwitterではない、そう考えているわけです。
経験的にネットでトラブルを起こす子は
依存が強い子(甘やかされ)
周りに振り回されやすい子(付和雷同・優柔不断)
承認欲求が強いのにコミュニケーション能力が低い子
勉強をまじめにできない子
勉強動機に社会的使命がない子(お金だけ)
などです。
志望校に進学するためにはスマホやSNSは本当に必要か、スマホやSNSの必要性の検討は、入試間近でもする価値がある問題か、もう少し大局的な視点から家族で考えてみてください。私の印象ですが
成績がそれほど高くない子は
「大切なこと」が見えていません。
目を開いて考えてみましょう!
インターネットは確かに便利
しかし、その真の便利さは
どんな手段か
いつ使うべきか
どのように使うか
を知っている人にのみ
もたらされる
しかし、その真の便利さは
どんな手段か
いつ使うべきか
どのように使うか
を知っている人にのみ
もたらされる
余談
私自身もスマホをもっていますが必要な時しか使いません。また、相手がどなたであろうとも着信やメールに即座に応じることはほとんどありません。
今、自分が取り組んでいる仕事を中断して外部からの連絡にいちいち対応していては、少なくとも私の能力では、仕事の効率に少なからず支障が生じるからです。
また、教室にいるときにばたばたと外部と接触していては、児童・生徒の監督業務にも影響が生じます。
自分勝手といわれるかもしれませんが、時間を効率的に使ってよい仕事をするためには重要なことだと考えており、だからこそ、他の方にも思いつきで電話したり話しかけたりしないように気をつけています。
周囲の皆様にはご迷惑をおかけしている点があろうかと存じますが、どうぞよろしくお願いします。