数学の伸び悩み どう考える?

『数学の伸び悩み どう考える?』


咲楽
数学の伸び悩み
どう考える?


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問題 数学の伸び悩み どう考える?



数学が伸びなやんでいるAさん。先生に相談したらアドバイスをもらいました。

カバ先生「だらり勉強はだめカバァ!目標に向かって計画的に取り組むカバァ!」

ふなこ先生「考え方や解き方がなぜそうなるかをはっきりさせながら勉強すればアップするなっしー!」

サル先生「答えをみてもわからないところは先生に聞いてくりかえし解けばきっとできるようになるキィー!」

どれにも取り組んできたつもりのAさんはちょっと困惑気味…。はたしてどの先生のアドバイスに重点を置けば数学の点が上がるでしょうか?(正解と解説はこのページです)



正解 『ふなこ先生』 です。



解説




カバ先生からのアドバイス
「だらり勉強はだめカバァ!目標に向かって計画的に取り組むカバァ!」



まず、カバ先生がアドバイスしてくれた「目標をもって計画的に取り組むこと」は大切です。目標がないと今の自分が達成目標に足りているのかどうかを判断できませんし、継続するための「やる気」もわきにくいですよね。

しかし、「数学の伸びなやみ」というのは、ちゃんとやっていても《認知心理学的に》深く理解できていないことから生じると考えられますので、目標をもって計画的に勉強に取り組むことは、やらないよりはよいと思いますが、記憶の定着や表面的な知識を問う教科ほど効果は期待できません。

伸び悩みの原因は認知的なつまづきですので、けがや病気を治すために「目標」や「やる気」だけでは不十分なのと同様に効果は限られるでしょう。さらに、けがや病気とはちがって、数学の理解は自然に深まることはありません。



ふなこ先生からのアドバイス
「考え方や解き方がなぜそうなるかをはっきりさせながら勉強すればアップするなっしー!」




次に、ふなこ先生からのアドバイスをみてみましょう。
数学のつまづきというのは認知的に深く理解できていない、あるいは、習得したことを問題理解と解決に活用するためのスキルが十分でないことが原因として考えられます。

具体的には、学校や塾で先生の説明を聴いているだけで終わってしまい、問題をわかりやすくするためのイメージを抱けなかったり、解くための図式やフロー(流れ)を作れなかったりすることにあります。

ですから、もし数学が伸び悩んだら何回も同じ説明を聞くより「考え方や解き方がなぜそうなるかをはっきりさせながら勉強する」ことのほうが大切です。

というわけで、ふなこ先生が「正解」ということになります。


作った式の意味を説明できない、流れを考えながら途中の式をつむぐことができない、ダイアグラム(図や表)を自発的に作成して問題解決に活用できないというのが、つまづきの典型例です。

しかし、伸び悩んでいる学習者でもそのほとんどは
「自分では、はっきりさせて勉強している」
と思いがちです。

ですから、理解の深さは自分ひとりで学習していると判断しにくいのも特徴の一つといえるでしょう。


教育認知心理学でははっきりさせる学習方法を
「精緻化方略(せいちかほうりゃく)」

図表を活用する学習方法を
「体制化方略(たいせいかほうりゃく)」

と呼んでいますが
これらの方略を正しく身につけるためには

しかるべき指導者にしかるべき指導

を受ける必要があります。



サル先生からのアドバイス
「答えをみてもわからないところは先生に聞いてくりかえし解けばきっとできるようになるキィー!」




最後に、サル先生からのアドバイスです。
このアドバイスは一見して正しそうなのですが、もっとも注意が必要です。

考えてみてください。
もしこのアドバイスが本当に的を射ているとすれば
だれでも数学のつまづきを乗り越えられる
と思いませんか。

しかし、これまで多くの生徒がこのアドバイスを誤って実行したため
つまづきを解消出来なかったことを事実として受け入れる必要があると思います。

認知能力以上の数学内容を乗り越えられなかった生徒は少なくないのです。


ここで、注意するべき点は2点あります。



1点目は数学という教科を
パターンを記憶する暗記教科だと誤解してしまう点
です。

一般に、数学の先生は問題の解き方を説明してくれますが、解き方を再現するための過程までは説明してくれません。


これは一つには、時間的な制約によるものです。
一からきちんと説明して深く理解してもらうためには、かんたんな質問でも20~30分かかることはよくあることです。

二つ目には、先生の認知心理学的知識が十分ではないことが考えられます。
一般に先生は、問題を上手に解くことやパフォーマンスとしての授業展開は上手なのですが
認知的なプロセスを分析する訓練をあまり受けていません。


つまり

問題を解いたり教えたりすることと正しく理解してもらうことは別物

なのです。

ですから、複数の生徒を担当している先生は、やり方を納得させて
「できた気にさせる」ことで指導を終えてしまいがち
なのです。

このようなケースでは、理解や解決のイメージ(アチーブでは「問題スキーマ」と呼んでいます)が身につかないまま、生徒は課された問題をとりあえず記憶して乗り切ろうとするので、テストになると似ている問題にさえ対応できない
「同じ問題しかできない状態」
に陥りがちです。

ちなみにこのような状態は、「同じような問題の宿題をたくさん出して、ほとんど同じ問題を使ってテストをするような指導形態」の結果として、しばしばみられる現象です。

このような「詰め込み指導」は指導者からするとやりやすく、「勉強をたくさんやった感」も得られやすいので、今でも多くの教場で行われています。

たしかに、たくさん授業を受けてたくさん問題をとけば学力が上がるような気がします。
しかし、問題の丸暗記では覚えている問題しかできるようにならない
相当非効率な学習方法
だと認識する必要があります。

当たり前かも知れませんが
人間はコンピューターではありませんし、特に数学は、頭のメモリに書き込めば学力がつくという教科ではないのです。



2点目は、支援を要請する「姿勢」に与える影響です。
わからないことがあっても、自分で調べたり考えたりした結果、残った問題点に対して教師に支援を求めることは効果があると考えられます。

しかし、ちょっと考えただけでわからないと判断して、依存的に教師にやり方を教えてもらおうとする「姿勢」は、数学の学力を高めにくくすることが明らかにされています。

答えをみてもわからないことはもう一度基本に戻り、基礎を固めてから再検討する姿勢が大切です。

わからないことをすぐに先生に聞いたり、答えをちらちら見ながら問題を解いたりする姿勢は、数学的な思考力を高めないだけでなく依存的な態度を形成してしまいます。
そうなると、いくら勉強してもテストの点数に結びつかないという残念な結果をもたらします。


研究事例から



中間段階ですがアチーブ進学会で行っている学力形成に関する研究事例をご紹介します。


勉強の方法が数学の学力(DvM)与える影響
図1 勉強の方法が数学の学力(DvM)与える影響


これは、数学の学力偏差値と学習方略の使用を統計的に分析した例です。

くりかえし学習する方法(Rh)や目標をもって計画的に学習する方法(Mv, Mc)からの学力影響は間接的にとどまっていることを表しています。

一方で、考え方や解き方をはっきりさせて活用する学習方法(El,Or)は直接的な影響を与えていることがわかります。


どうすればいい?



数学の伸び悩みを解消するためには専門的な指導が必要です。勉強をやっていてもなかなか効果に結びつかない場合は

アチーブ進学会の

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どうぞお気軽にお問い合わせください。

最後までお読みいただき本当にありがとうございました。



綾部 宏明 (あやべ ひろあき) アチーブ進学会代表 / 京都大学大学院教育学研究科) ←教職員情報へリンク

学力をアップさせる方法はシリーズでお伝えしていきます。

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