アチーブ進学会夏期講習2015(中学部)
の読書作文講座で取り組む課題図書が決まりましたのでお知らせいたします。
本の紹介
『かあちゃん取扱説明書』や『糸子の体重計』などの児童文学作品で注目を集める作家、いとうみくがはじめてヤングアダルト世代にむけて描いた作品。
父親の突然の死により、かあちゃん、妹の陽菜との、ちいさなアパートでの三人暮らしがはじまった陽介。働きに出るかあちゃんにかわって、妹の面倒はみると言ったものの、陽介にできることはあまりに少ない――。病気の妹のために、おかゆの作り方をおしえてくれた隣のお姉さん。
二階に越してきた同い年のシュウ。万引きをくり返すクラスメートの女の子……。いろんな人との関わりが、かたくなだった陽介の心を少しずつ変えていく。そして、祭り好きだったとうちゃんにかわって、神輿をかつぐ決心をする。
自分のもてる力をふりしぼって、神輿を空へ、空へと高くつきあげる……。痛みと孤独を背負った少年の、その一歩、一歩が鮮やかな物語となった。
気鋭の作家がYA世代の“今”をさわやかに描ききった意欲作。
著者紹介
いとう みく
神奈川県生まれ。フリーライター。広告から教育・保育・福祉・食関係の企画制作まで幅広く行う。『気のいい死神』で第37回JOMO童話賞優秀賞受賞。『糸子の体重計』(童心社)で第46回日本児童文学者協会新人賞受賞。全国児童文学同人誌連絡会「季節風」同人
読者のみなさまからのご感想
(小峰書店書籍案内ページより)父親の死という、それまでのあたりまえをがらっと変えてしまうような大きな出来ごとがあって。それはただ「悲しみを乗り越える」ということだけじゃなくて、「これまでと違う日常を受け入れて」生活していかなくてはいけないということ。
そのなかで、お母さんが陽介に「できないことを”しかたない”ってあきらめるんじゃなくて、いま大事だと思うことを、かあちゃんは自分で選択したの。選んだの」と話す場面。ぐっときました。
自分のやりたいことと違ったって、状況を考えたらそうせざるをえない。そういうことって、大人でもたくさんあります。でもそれをしかたないからやった、誰かのためにそうしてやった、と思いながら生きていくと、さきざきけっこう辛くなる。それで辛くなってる大人というのも実際たくさんいると思うんです。
まだ中学一年生、自分の望みでない環境になって、もやもやしながらも健気に「しかたないからそうしなきゃ」でいっぱいの陽介に、「あきらめるんじゃなくて、選ぶの。考えて、ちゃんと自分で」と言うお母さんは、厳しいのかもしれません。でもそれは、ネガティブな選択でも、誰に強いられたのでもなく自分で決めたんだということが、未来の自分を助けてくれるはずだから。
中学一年生の陽介がどうにもならない現実にぶつかりながらも、少しずつ歩いていくこの物語は、子どもが大人になって、できるだけしあわせに生きていくために必要なものがちいさくたくさん詰まってる。なんだか生きづらいと思っている大人にも、じんわり効いてくれるような気がします。
最後、かつて父親がかっこよく担いでいた憧れの神輿を陽介が高く担ぎ上げる場面で、一緒に空に吸い込まれるような気持ちよさと、希望を感じられたのがとても良かったです。
トーハン 仕入企画推進室 ほんをうえるプロジェクト/船田真喜さん
その他
・読書作文コンクールに出品予定です。
・今年も、オリジナル作品集(冊子)を制作する予定です。
・今年は、早く提出できた人から英語エッセイも募集する計画があります(希望者)。
物語を鮮やかに感じ取る力を育んで
すてきな感想文を仕上げていきましょう!
綾部 宏明 (あやべひろあき)